9月定例会 一般質問①【官製談合事件まとめ】
2025.10.13
2023年9月、県新発田地域振興局農村整備部発注工事における官製談合事件が発覚しました。県は2024年2月、公判の傍聴に基づき内部調査報告書・再発防止策を策定し、第三者による有識者会議も設置しましたが、事実認定や背景部分への言及、実効性に乏しく、徹底した調査が必要と指摘しました。
県は「これ以上の調査は難しい」と答弁したため、諏佐は2024年8月、新潟地方検察庁に対し事件関係者の証言が詳細に記載された「刑事確定訴訟記録」の閲覧を申請し、12月にこれを閲覧しました。
⑴ 論点
事件は発覚して2年が経過しており、本県元職員は有罪判決が下されていることから、その罪責について議論する意味はありません。
問うべき論点は、①これまでの県発注工事における入札制度の適正性、②事件発覚後の県の対応、③実態を踏まえた今後の入札制度の検討④県議会議員や業者含む利害関係者と県職員との関わり方を検討することです。
公共事業は県民が納めた税金によって行われており、それらが公正・公平・民主的に運用されていたのか、そうでなかったとすればどうやって改善していくかを考えることが必要です。
⑵ 県内部調査との齟齬
県は内部調査報告書において「部長間における引き継ぎはなかった」「業者からの供応接待もなかった」等とまとめましたが、歴代部長複数名は警察の捜査に対し「引き継ぎをした」または「引き継ぎを受けた」と認めており、また日常的に業者からの接待を受けていたとする証言も詳細に記載されていました。
2025年2月定例会でこれを指摘したところ、県も諏佐が閲覧した刑事確定訴訟記録を閲覧する方針を示し、有識者会議と共有したうえで今年9月に最終報告書を公表しました。
⑶ 新たに明らかになった点
① 県再発防止策の抜け道
県は、再発防止策として「工事費内訳書の内容確認拡大」を掲げましたが、事件に関与したとする複数人の業者の証言によれば、談合による落札予定(本命)業者が作成した内訳書は「スタンダード」と呼ばれ、指名業者間で共有するシステムが確立しているとしており、手口を踏まえると県策定の再発防止策に実効性がないことは明らかです。
また、本来は公正な競争によって落札業者が決定されるべきですが、指名業者間で入札する金額を示し合わせる「札回し」や、話し合いや投票によって落札業者を決定する「研究会」と呼ばれる手口も記載されていました。
② 県議会議員、利害関係者による不適切な関与
一部の証言では事実上、建設業者が県工事を差配していたというもののほか、県議会議員による不適切な供応等があったとする記載があり、県は当初「なかった」としていましたが最終報告ではこれを認めました。
2019年に発覚した長岡市発注工事においても、長岡市選出の県議会議員による要請によって市の入札制度を不当に歪めた事等が検察の指摘によって明らかになり、政治家・利害関係者との関わり方を見直すきっかけになりました。
⑷ 諏佐が示した再発防止策
① 一般競争入札の拡大
県はこれまで、※1一般競争入札の基準を原則1億2,000万円以上(3%程)としていましたが、諏佐が2023年12月定例会で「対象を拡大すべき」と指摘したところ、2024年7月、7,000万円以上に拡大しました(8%程)。
しかしそれでも依然として、※2指名競争入札の割合が異常に高いことを踏まえ、全国ベースの1,000万円程に拡大すべきという立場で議論しています。
確かに、指名競争入札は不適格業者を排除できる事等のメリットがありますが、工事品質は発注者によって検査されていることから、県がその点を過剰に考慮する必要はないと考えます。
いずれにしても、自治体の制度について規定した地方自治法は、「一般競争入札が原則」としており、判例においてもすべては競争性・経済性が大前提と判示しており、あくまでも指名競争入札は例外的な運用にとどめるべきという考えを示しました。
※1 一般競争入札・・参加資格を満たせば誰でも入札に参加できる
※2 指名競争入札・・発注者(県)が選んだ業者だけが参加できる
② 指名競争入札の在り方
「札回し」「研究会」と呼ばれた事件の実態を踏まえると、指名競争入札を行う場合は、例えば県が業者選定→指名審査会は全て外部第三者に委ねるという二段階の過程を踏む「福島方式」を採用すれば、事件同様の「官による情報漏えい」は起こりえません。
③ 県議会議員・利害関係者と県職員の関わり方
県議には制度上、予算の執行権はありませんが、県職員は県議による供応の目的について「支配下に置きたかったのが本音だと思う」と証言しました。
場合によっては県議や業者を含む利害関係者からによる要望の適・不適が判断できない可能性もあることから、要望は全て記録、対応する職階を厳密に規定したうえで、必ず複数で、原則職場(地域振興局等)で対応することにし、圧力や不当な要求を跳ね返しやすい状況をルールとして策定することが必要であると考えます。
その他
諏佐は前職である長岡市議会議員の頃から、当時同じく会派無所属だった関貴志市議(現7期・信濃2)と刑事確定訴訟記録を閲覧し、官製談合事件、入札制度改革に取り組んできました。
地方議会の質問で刑事確定訴訟記録を用いた例は、関貴志市議と諏佐が全国初だったようです。